ストレス=悪。いやなこと、つらいこと。
ストレスさえなければ、良いのに!と思う方も多いと思います。
ストレスという言葉は、ネガティブな意味で使われることが多いと思いますが、
果たして、ストレスは本当に悪なのでしょうか?
今日のテーマはストレス。結論から言うと、ストレスは決して悪ではない。
心身の健康を保つためにも、上手に付き合うことが大切です。
ストレスがない人生はありえません。これからもずっとストレスは続いていくからです。
目次
1.ストレスとは?
ストレス学説を唱えたカナダの生物学者、ハンス・セリエによると、
ストレスとは「外部からもたらされる歪み、あるいは歪みの原因」だと定義し、
そのことによるさまざまな反応は有害物質から身を守るための反応であり、生命維持装置の役割りをしているといいます。
生きているかぎり、ストレスはつきまとう。
そもそも生まれ落ちる瞬間から、ストレスはある。
狭い産道をとおる赤ん坊のストレスたるや、産みの苦しみを味わう母親のそれと同じだろう。
母親と赤ん坊が、この世で最初に行う共同作業こそ、ストレスを味わうことではないか。
だとしたら、生き物はある程度のストレスには耐えられるようにできているし、生命自体、ストレスを必要としているのに違いない。
ハンス・セリエも言っている。
「ストレスというものが存在しなければ、人間は滅んでいただろう」と。
2.ストレスの種類
ストレスという言葉を聞いて、真っ先に連想されるのは、仕事や人間関係、育児などではないでしょうか?実は私たちは生きるうえでたくさんのストレスにさらされています。
- 物理的要因…天候、気温や湿度などの気候条件、騒音、異臭、大気汚染など環境に関することなど
- 化学的要因…薬品や添加物など
- 生物的要因…過労や栄養不足、睡眠不足、病原菌に対する防御など
- 精神的要因…人間関係や性格、社会的な環境の変化など
ときには結婚や出産、昇進などの喜ばしいこともストレスの原因になります。
最近では、長時間のパソコン作業による「テクノ・ストレス」も心身に大きなストレスを与えています。ちなみに、アメリカのある心理学者によると、私たちが経験する出来事の中でもっとも大きなストレス要因は「配偶者の死」だそうです。
3.良いストレスと悪いストレス
適度なストレスは自己成長などにもつながり、人生を豊かにしてくれることもあります。ストレスにはプラスとマイナスの側面があります。
良いストレスは、何かを達成させる原動力になったり、何かを頑張るための適度な刺激になります。目の前の課題や試練(ストレス)をクリアすることで、人間的に成長できたり、充実感や達成感、満足感を得られるもののことを指します。
スポーツ選手の中には、自らストレスを受ける環境に身を置く方がいらっしゃいますが、能力の開発や集中力の向上など、自分の成長に役立つものが良いストレスということになります。また、女性が恋をするときれいになるのは、適度なストレスにより女性ホルモンなどの機能が高まるからだそうです。
良いストレスによる適度な緊張は、心身に良い影響を与えます。
反対に、悪いストレスというのは、嫌だと思うことを続け、自分がどんどん追いつめられて苦しくなってしまうものを指します。
結果的には、体調を崩したり心が落ち込んでしまい、心身に悪影響を及ぼします。
4.ストレスがプラスに作用するとき、マイナスに作用するときの違い
では、なぜストレスがプラスに作用したり、マイナスに作用したりするのでしょうか?
ストレスがプラスに作用するかマイナスに作用するかは、脳が「快」と感じるか「不快」と感じるかによると言われています。心地よい刺激に反応する細胞と不快な刺激に反応する細胞が存在します。ここで不快刺激に反応する細胞によりストレス状態となります。その刺激は、視床下部などを経て、自律神経や内分泌に影響を与えます。同じストレッサ―でも、ストレスと感じる人と感じない人がいるのは、感受性や物事に対する考え方が違うからです。
5.ストレスに強い人、弱い人の違い
<ストレスに強い人>
・楽観的
・主体的
・外交的
総じて、自分を肯定して生きている人
<ストレスに弱い人>
・真面目すぎる
・几帳面
・NOとはいえない
・頑固
・プライドが高い
・心配性
総じて、心配性などの性格的要因がある人
6.ストレスをためやすいタイプ
一般的には以下のような人が、ストレスをためやすいタイプと言われています。
- 真面目で責任感が強い人
- 頑張りすぎてしまう人
- 完璧主義者
- 自己評価が高く、競争心が強い人
- 優秀な人
- 我慢強い人
- 細かいことにこだわってしまう人
- 気を遣いすぎる人
- 常に相手のことばかり考えてしまう人
- 自己主張ができない人
- 自己評価が低く、自分に自信がない人
- 自分のことが好きになれない人
- すぐに将来に不安を感じてしまう人
- 短気な人
- 予定外のことがあると不安になりやすい人
- 好き嫌いや感情で他人を判断しやすい人
- 相手に過度に期待する人
- ささいなことを気に病んでしまう人
- 過度な運動不足の人
7.ストレスと自律神経 不調が起きるメカニズム
わたしたちの身体は、自律神経の交感神経と副交感神経の2つの神経の支配をうけています。 脳から情報を伝達するときに、この2つの神経に亢進と抑制の命令を行います。交感神経と副交感神経は、1つずつの臓器に対し2重に拮抗的に支配(二重支配)しています。この2つの神経のバランスにより、呼吸や血圧、消化、排泄、体温調節などの各臓器の働きを調整しています。
からだがストレス(ストレッサー)をうけると、自律神経が関与します。交感神経は一般に「攻撃」(活動する神経)であり、副交感神経は「休息」(リラックスの神経)です。ほとんどの臓器がこれらの二重支配を受けているため、ストレスが長期にわたると自律神経が影響をうけてバランスが崩れ、胃腸や肌への不具合や頭痛を起こすこともあるのです。
心で処理できずに抑圧された感情は、情緒の不安定、身体の不調、そして行動にまで影響を及ぼします。
8.マイナスなストレスを感じると起きる症状
心理的症状
- イライラしたり感情的になる、精神的に不安定になる
- 漠然とした不安感、気分が落ち込む、憂鬱になる
- 注意力、集中力の低下、無気力になる
- 新しいことに消極的になる
身体的症状
- 偏頭痛、腹痛、胃もたれ、便秘、下痢
- 肩こり、腰痛
- 動悸、めまい
- 手が震える
- 生理不順
- 倦怠感、疲れやすい、疲れがとれない
- 寝つきが悪い、寝覚めが悪い、夜中に目を覚ます、朝起きることができない
- 食欲不振
行動的症状
- すぐにぼんやりとしてしまう
- 笑う回数が減る
- ネットニュースなどをだらだらと見続けてしまう
- 遅刻や早退が増える
- ギャンブルやお酒に走る
- 言動が乱暴になる
- 喋り方など様々な行動が早くなる
- 仕事でミスを多発する
- 外出を面倒に感じてひきこもりがちになる
9.ストレスがもたらす体の不調や病気
ストレスは、不眠やうつ、胃痛や頭痛、胃や十二指腸など、心身ともに不調を起こします。
●胃腸の不具合(胃痛、胸やけ)
●肌の不調(ストレスによる肌の湿疹、かゆみ、ニキビなど)
●頭痛・肩こり(頭痛は随伴症状を伴うことも多い)
ひどいとこんな病気も発症します。
- 胃潰瘍、胃がん、十二指腸潰瘍
- 過敏性腸症候群(腹痛、吐き気、慢性的な下痢、けいれん性便秘など)
- 虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞など)
- 自律神経失調症(めまい、動悸、のぼせ、肩こりなど)
- 心身症
- 神経症
- うつ病
- がんのリスク
10.ストレスとの向き合い方
<心の持ち方>
ストレスは、考え方や受け止め方次第で減らすことが可能です。ストレスをためないために、まずは日頃の考え方や発想を変えることを意識してみましょう。
- ストレスの原因を知る
- 苦手な人とは無理に接せず距離を置く
- 時には断る勇気を持つ
- 嫌なこともポジティブに受け止める習慣をつける
- 感情を抑えすぎないようにする
- 適当ということを覚える
<ストレス発散法>
ストレスがたまってもすぐに発散することを心がければ、ストレスがそれ以上たまり、悪影響を受けることはなくなります。
- モヤモヤした感情を放置せずに、人に話したり紙に書き出す
- 心から笑う
- 好きな音楽やその時の感情に合った音楽を聴く
- 好きなことをする時間を作る
- 好きな物を積極的に食べる
- マッサージをしてストレスでこわばった体をほぐす
- 歌う、大声を出す
- 深呼吸してリラックスする
- 散歩して気分転換をする
- 身体を動かしてイライラを発散する
- 森林浴でストレスホルモンを減らす
普段から意識できること 日常生活編
適度な時間で、良質な睡眠をとること。
良質な睡眠をとるために、入浴をとること。
適度な時間、良質な睡眠をとる
眠ることは何よりも効果的なストレス解消法。睡眠中は日中疲労した体、心、脳を休ませ、感情を処理するのに大切な役割を担っているので、熟睡することでストレスは緩和されますし、眠りが浅かったり睡眠時間が短いと逆にストレスとなります。ストレスがたまっているなと感じたら、いつもより早い時間にベッドに入るよう心がけましょう。
良質な睡眠をもたらす入浴
ただ、ストレスがたまっている状態だと、寝つきが悪かったり、夜中に何度も目が覚めたり、朝起きても寝覚めが悪かったり、熟睡できずに寝た気がしない、ということも。そのような時は就寝前の入浴で入眠を促しましょう。
人間は体温が下がるときに眠気を感じます。入浴して体を温めることにより、お風呂から出た後の体温の低下で徐々に眠気を感じ、自然に眠ることができるようになります。また、身体が温まることにより副交感神経が優位になり、深いリラックス効果が得られ、身体がより入眠しやすい状態になります。
ただし、熱すぎる温度は交感神経が刺激されてかえって眠れなくなってしまったり、体温が下がるまでに時間がかかり、寝つきが悪くなってしまうので気をつけましょう。理想の入浴は38~40度のややぬるめのお湯に15分~20分です。
また、入浴中におすすめなのが足裏のマッサージ。足裏にはツボが多く、ストレス解消に効果的なツボや、ストレスで弱ってしまった胃腸の不調に効果的なツボがあります。ツボを刺激することで心身の不調を整えてあげましょう。